松井みどり(美術評論家)
『三月の5日間』で、うわさ話や行きずりの恋に明け暮れる若者たちの、戦争や政治との繋がりの自覚を描いて以来、岡田利規とチェルフィッチュは、同時代の選択を、一作毎に変る斬新な手法であぶり出して来た。11年の『現在地』以降は、原発事故、国境問題、核の傘といった問題が、SF、霊との対話、野球談義といったフィクショナルなフレームを通してユーモラスかつ象徴的に取り上げられた。今、戦争がよりリアルな危機として日常を脅かす一方で、ネット依存や多数決の法則に縛られた社会は、倫理的飽和状態にある。そんな、閉塞感と焦燥感が爆発寸前までに溜められた私たちの感情に、新しい『三月の5日間』が揺さぶりをかけてくれることを期待する。