『三月の5日間』初演俳優アンケート:山縣太一

アンケート構成:桜井圭介(音楽家、ダンス批評)

Q1 当時を振り返って、出演者=俳優として、チェルフィッチュそして『三月の5日間』は、どのような演劇だったとお考えでしょうか? あるいは、自分はどのように舞台に立っていたのか?について、お聞かせください。

『三月の5日間』の前にユビュ王という作品を作って本番終わったくらいかな?岡田さんが今はないガーディアンガーデン演劇フェスティバルのオーディションを受けるか受けないかみたいな話をしてて。でも忙しくなるのもなー。マイペースでやりたいな。でもやっぱり受けようよ。って事でユビュ王の抜粋したワンシーンでオーディションを受けることになりました。当時の看板俳優難波幸太さんと岡田さんを世に出してやりてえな。なんて路上でビール飲みながら話していたのが記憶に鮮明に残っています。見事オーディションに合格して品川の今はないスフィアメックスで公演することになり、『三月の5日間』の稽古がはじまりました。なんか実際に戦争がおっぱじまったりしてるのに稽古場所の大倉山記念館でタバコ吸いながら戦争はじまっちゃったねー。なんて話している戦争との距離感とか自分は安全な場所にいて客席のような場所で目の前で起きていることも現実とは捉えないような距離感。空気感?みたいな部分は作品にほしいな。どういう身体ならそういう表現が立ち上げられるのかな?今までの無自覚なダラダラした身体表現にプラスして自覚的な身体表現が必要だと思うようになった。今から思えばあの時がただの横浜のチンピラだったバカが俳優になりはじめた瞬間だったかもしれません。

2004年『三月の5日間』初演:山縣太一

Q2 チェルフィッチュの舞台を観客として観劇することがあったと思いますが、外側から見て何か感じたことがあればお聞かせください。また、近年の岡田演劇は方法論的に変化したとも言われますが、変化したもの・変わらないもの、思うところがあればお聞かせください。

チェルフィッチュを離れてチェルフィッチュの公演を観客として観るということが実はあまりなくて。岡田さんはちゃんとしっかり時間をかけて稽古ができて俳優が自覚を持ち作品に関わりだすところまできちんとやれれば最強の人だと思う。チェルフィッチュに限らず俳優が自分から作品に関わりを持ちにいかないと演劇というライブパフォーマンスは強度を持たないなとは思います。演出家の下に役者みたいなパワーバランスがいい場合もありますがやるべき事が明確であればフラットな関係を意識的に構築するのも大事かな?チェルフィッチュだけに関して言えば『三月の5日間』のあとに三月の5日間のような作り方でもう少し作品を発表してもよかったかなと思います。岸田戯曲賞を受賞したりで今までと状況が変わり関わる人も変わったりで自分としてはある程度継続したメンバーで作品を作りたかったです。個人的には舞台美術とかを使わないで俳優が作品世界を立ち上げるみたいな松村さんの『マリファナの害について』のような作品がまた観たいな。舞台美術にお金をかけるなら俺だったら俳優に支払うな。

2004年『三月の5日間』初演:山縣太一

Q3 初演時には2000年代の若者の身体として舞台に立たれたわけですが、2017年の若者(全般/俳優)の身体について、どのような印象をお持ちでしょうか? また、リクリエイション版に出演する若い俳優にアドバイスするとしたら、どのような言葉を伝えますか?

『三月の5日間』初演当時は僕は25歳かな?自分の目線の作品でした。これから作品を立ち上げる若い子達はもちろんリアルタイムではない。でも演劇なんてどれもそんなもん。大事なのは現代の身体が舞台に立つこと。僕も僕より上の世代の人たちに対してはリアルタイムではないし。興味もないし。俺よりすごいやつなんて過去にいないし。今の若い子達はワークショップとかやってても思いますが求めにこないなという印象が強いですね。体験して体感したら終わり。自分の表現に落とし込む作業などは不得意なのかなと思います。多分ネットの影響でライブもフェスも安全な場所で家とかで擬似体験して錯覚っていうことが多そう。表現者は草食系じゃできないでしょ。ラブホで2ダースやりまくるぐらいがちょうどいいっしょ。求めてこいよ。求めてくるから与えてやれるんだ。若い子達僕の背骨を蹴ちらして素晴らしい表現者になってねー。

2004年『三月の5日間』初演:山縣太一

プロフィール
山縣太一(演劇ユニット・オフィスマウンテン主宰、俳優、演出家、劇作家、振付家、ダンサー)
1979年、横浜生まれ。2001年より演劇カンパニー・チェルフィッチュに俳優として参加。 各作品において自身の振り付けを行い、中心メンバーとしてチェルフィッチュを牽引。ダンサー手塚夏子の一番弟子。2015年より自身の作・演出する演劇ユニット・オフィスマウンテンを始動。日常の無自覚で豊かな身体を自覚的に舞台上にのせるための自身が考案したメソッドを用いて演劇作品を制作。『ドッグマンノーライフ』(2016)が第61回岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。