徳永京子(演劇ジャーナリスト)
チェルフィッチュは、静かな演劇/現代口語演劇が主眼にしてきた「関係性の目論み」から「時間の目論み」へと、日本の演劇を方向転換した。言うまでもなくこれはとても大きな更新なのだが、そこに官能性を忘れなかったのが、同じくらいすごい。
なぜなら、真に優れた作品はすべて官能的だから。時間感覚の変容や、複数の時間を体験することは、もともと演劇を観る行為に含まれていたけれど、岡田利規はそれを“劇場で稀に起きる奇跡”ではなく“劇場を出たあとも作用し続ける生理的な実感”にしようと、しかも成功率100%にしようと本気で考えている気がする。
『三月の5日間』リクリエーションは、その過程の重要な作品になるはずだ。