七尾旅人(シンガーソングライター)
今もよく思い出すのは、初めて観た公演後、どなたかとの対談で、岡田さんが突然、犬のしっぽの話を始めた時の感銘だ。不覚にも前後の文脈を失念してしまったが、おそらくチェルフィッチュ独自の身体感覚にまつわる話題だったと思う。
「犬のしっぽはけして嘘をつかない」と岡田さんは言った。
実のところ、犬のしっぽは、時おりフェイントをかけてくる。
彼らは激怒していても、しっぽをふる場合があるのだ。
岡田さんもきっとそのことを知っていて、敢えて、話に持ち出したのではないか。
そんな不安定なしっぽを愛してやまない自分は、この瞬間から、チェルフィッチュのファンになった。