クリストフ・スラフマイルダー(クンステン・フェスティバル・デザール ディレクター)

私とチェルフィッチュとの出会いは、2006年、視察で訪れた日本で鑑賞した、『三月の5日間』スーパーデラックス(六本木)公演でした。
信じられないほど特異な芸術作品を発見した私は、凄まじい興奮に包まれたことを覚えています。岡田利規の芸術言語との出会いは、パフォーミング・アーツ・キュレーターとしての歩みの中でも、非常に重要な瞬間です。
日本語は全く未知の言葉ですが、俳優の身体・ジェスチャー・空間と時間・身体の隙間・ジェスチャーが表出するまでの時間、といったものを通して舞台上で発せられる言葉は、見えざる明快さと即時性を持って私に深く影響を及ぼしました。
発話、身体、空間と時間の使用方法、などのパフォーマンスを構成する要素がどれもとりわけ特徴的に立ち現れることで、21世紀の日本で暮らす若い世代が感じている複雑な感覚を追体験することが出来、作品が私自身に深く訴えかけてくるような感覚を得ました。

『三月の5日間』は、その一年後にベルギー・ブリュッセルで初の海外公演を迎え、観客に大きな衝撃を与えます。
それ以降、本作が描く世界観は、作品が持つ特徴的な同時代性と、作品が立ち上げるビジョンの鮮明さ・深遠さをもって、その世界観にあまり馴染みのない大勢の観客へ共有されています。